多焦点眼内レンズを用いた白内障手術
白内障手術では、混濁した水晶体を眼内から除去し、代わりにきれいな眼内レンズを固定します。眼内レンズは、従来はピントの合う箇所が1カ所に固定されていましたが、特殊な加工をすることで、2カ所にピントの合う2焦点眼内レンズ、3カ所にピントの合う3焦点眼内レンズが開発されています。
うまく合えば、眼鏡をかけずに見えるシーンが広がりますので、非常に有益な眼内レンズになり得ます。しかし、デメリットもありますので、メリット・デメリットを勘案の上、選択してください。
現在、多焦点眼内レンズとしては、2焦点眼内レンズとして、遠近眼内レンズ、遠中眼内レンズ、焦点深度拡張型眼内レンズ(遠方から中間までの幅で概ね良好に見える眼内レンズ) などが選択でき、3焦点眼内レンズは遠中近においてピントの合う眼内レンズです。また、乱視のある方には乱視矯正用が用意されています。
多焦点眼内レンズは、裸眼で見える場面が増えて、眼鏡をあまり使わずに済むことができることを目標に開発された眼内レンズですが、単焦点レンズに比べると、レンズ構造上、光が分散されてしまうために、やや見えるクオリティーは下がります(視力検査での結果には影響でないレベルです)。また、ハロー・グレアという症状(光の周りに輪がかかって見える、強い光がまぶしく感じる。特に夜間の車ライトを見たときに感じやすい。)が出やすくなります。従って、職業運転手や、鮮明に見えることが求められる職業の方(パイロット、画家、外科医 など)は避けたほうがよいとされています。
人によって満足度は高い眼内レンズである反面、一部の方では合わないと感じ単焦点レンズへの交換が必要になる可能性があります。
一般的には、多焦点眼内レンズは、眼鏡なしでそこそこの視力が出れば十分(裸眼で運転ができ、かつ裸眼でスマホが見れて本が読めれば十分)といういわゆるアバウトな性格の方には満足度が高い眼内レンズといわれており、逆に神経質な方、眼鏡を使ってでもよいのでより鮮明に見えたい方には向かない眼内レンズとされておりますので、自分の性格も考えてどちらを使うのかを選択してください。(単焦点眼内レンズのほうが、位置によって必ず眼鏡を使用する必要がありますが、単純な構造であるため見え方のクオリティーは最も高い眼内レンズです。)
なお、通常の単焦点眼内レンズでの白内障手術と同様に、度数のズレが生じた場合(測定誤差や眼内の支持組織の状態等により)には、一度数の眼鏡をかけていただくか眼内レンズ交換、変更などの追加手術が必要になります。